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第1章 VoIP技術


1.2.VoIPの基礎技術
VoIPの基礎技術を考えるとき、送信がアナログ信号である音声を目指す相手に着実に届け、会話を成立させ会話の終了を伝送する技術であることが基本である。
この為の1つの技術(体系)がVoIPと言うわけである。 この目的のために使うリンク(回線)とノード(機器)で通信サービスは分類され、VoIPはVoPで、パケット通信の内の一つである。


1.2.1 音声の変換
1.2.1.1 AD変換
アナログ信号をデジタル信号またはその逆を行うAD変換はPCMかパターン変換に大きく分かれる。PCMがサンプリングしてコード化するタイプで、CELPがパターン変換と言うわけである。

1.2.1.2 音声圧縮(Codec)



1.2.1.3 音声エコー
エコーには、
1) アコースティックエコー:
エコーは自分自身の声を2度聞いたり(送話者エコー)、相手の声を2度きいたりする(受話者エコー)こと。
2) ハイブリッドエコー:
2W/4W変換回路のハイブリッド回路で起きる。しかし、これは回り込みによる発生は、理論上必須で発生そのものは仕方が無いと言える。

対策としては、エコーキャンセル技術があり、エコーキヤンセラー(Echo canceller)と遅延長(Delay Volume)の設定で対応する。Delay Volumeは16m秒と32m秒で16m秒の方が優れている。

1.2.1.4 無音圧縮
音の無い状態ではデータ伝送を行わないこと。
音声符号化のITU-T勧告G.723・1のAnnex A、但し、無音圧縮は機器の処理負担が増える。

1.2.1.5 VoIPの音声帯域
G.729のAnnex Bで定義している。
現実的には40〜60%が会話には無音であると言われている。

1.2.1.6音質
音質
Audio 0.3〜3.4kHzサンプリングで通話可能である。
(参考: サンプリング周波数は、CDが44.1kHz。 DVDは最高音質では、量子化24ビットの192kHzサンプリングを2チャンネル、あるいは、量子化24ビットの96kHzサンプリングを6チャンネル、といった組み合わせが可能)

1.2.1.7 音質基準
音質基準にはMOS(Mean Opinion Score)、PESQ (Perceptual Speech Quality Measurement) ITU-T P.861, PAMS(Perpetual Analysis Measurement System)、 R値がある。

R値= R0 - Is - Id -Ie + A
Rating Factorの意味。
R0 (Basic signal-to-noise ratio)
回線雑音、送受話室内騒音、加入者系雑音による主観品質劣化

Is (simultaneous impairment factor)
OLR(ラウドネス)、側音、量子化歪により主観品質劣化

Id (Delay impairment factor)
送話者エコー、受話者エコー、絶対遅延による

主観品質劣化

Ie (Equipment impairment factor)
低ビットレート符号化、パケット・セル損失による主観品質劣化

A (Advantage factor)
モバイル通信などの利便性が主観品質(満足度)に与える影響と補完




■ エンドツーエンド遅延
クラス R値 E-to-E遅延 評価
クラスA >80 <100ms 固定電話並
クラスB >70 <150ms 携帯電話並
クラスC >50 <400ms





1.2.1.8 音声通信三基準
音声通信三基準とは以下の三つである。 通信事業者の売り物の評価基準となる。
@ 通話品質:伝送損失(15dB〜17dBエンドエンド平均/明瞭度/周波数特性/呼損率)
A 接続品質
B 安定品質


1.2.2 遅延とその対策
(1) 遅延の種類

●パケット化遅延
圧縮した音声データをIPパケットにするときに生じる遅延。 一つのパケットに載せる音声パケットを小さくして送出時間を短くすれば、遅延は小さくなるが、オーバーヘッドの増大により、帯域はより必要になる。

●伝播遅延
(ノード) − (ノ−ド)を伝播するのに要するもの。 通常は無視出来る。 
物理的なもの。

●伝送遅延:
シリアル化遅延とも言う。パケットのビットパルスとしてネットワークに送出する遅延。 伝送時間のこと。
CPU性能/ソフト性能に左右される

●伝送待ち時間:
ゲートウェイやルーターなどでパケット送信待ちキュー(送信バッファ)に繋がれてからネットワークへの送出が始まるまでの時間
設計/ソフト性能に左右される

●ノード内遅延:
ルーターがパケットを受信してから内部のバスなどを介して送信キューにキューイングするまでのパケット処理と転送の時間
ネットワーク性能

●圧縮・伸張による遅延:
G.729A(8kbps)圧縮が10msec(理論上Z値)、伸張が5msec
CPU/ソフト性能に左右される。

●回線種類による物理的な遅延時間:
物理的な遅延
*HSD(高速デジタル)12.7 x 0.01 x L(msec)札幌〜那覇で約36msec
*ATM l0msec

* 電話サービス(加入網、ISDN):約28msec
* 電話サービス(衛星通信):300msec
* IP−VPN:35msec

※ 信号が同軸ケーブルを伝わる時間
→ 0.556μsec/100m


(2)ジッタ
パケット到着時間のずれのこと。 受信側でバッファーを持つことにより、受信パケットを一時格納して、次の過程に渡すこと。


(3)パケットロス
発生は網上でのノイズによるものか、受信側GWの設定または仕様によって発生する。
対策としては、PLC(Packet Loss Concealment)という、失ったパケットをコピーするものである。 G.729, G.723.1には含まれている機能。


1.2.3 パケット化
デジタル化をした音声はデジタル圧縮をかけ、その後でパケット化を行う過程を通る。

1.2.3.1 VoIPパケットの帯域
例)
ヘッダー: 12バイト
UDPヘッダー: 8バイト
RTPヘッダー: 20バイト
フレームタイム(処理時間)を20秒
とすると、

40byte(ヘッダー部分)x 8bit/byte÷20msec
=16bit/msec=16kbps
つまり40byteのヘッダーだけで16kbpsの帯域が必要
対策:ヘッダー圧縮だけで2〜3Byteとする0これで2kbpsの帯域


1.2.4 QoS
Quality of Serviceのこと。 特定のアプリケーションに必要となる帯域幅とレイテンシーを実現する。

QoSのツール
・ 追加帯域幅
・ cRTP (Compressed Real Time Transport Protocol)
・ キューイング
・ パケット分類
・ トラフィックフローのシェ-ピングとポリシング
・ フラグメンテーション
・ 高速転送
・ 高速キューイング

VoIPの音声品質を確保するための要件:
* 音声パケットを少ない遅延でキューイング
* ゆらぎの平均値と最大値を最小に抑えて
* 片道遅延を200ms以下に抑え込むQoS技術

LAN/WANでの音声パケットの到着時間が揺らいでしまう可能性があり、揺らぎ吸収だけで対処しようとすると、バッファーを大きくする必要の為、結局遅延が大きくなってしまう。

1.2.4.1 キューイング
ある決められた順序でパケットをインターフェースに送出する技術。

キューイングの種類:
WFQ (Weighted Fair Queuing)
CQ (Customs Queuing)
PQ (Priority Queuing)
CB-WFQ (Class base WFQ)
LLQ (Low Latency Queuing)

1.2.4.2 シェ-ピング
設定されたレートを超えたトラフィックはキューに保存することで、トラフィックをスムーズに行う機能。 異なるデータレートの組み合わせで構成されるネットワークトポロジー内のボトルネックを取り除くことで輻輳を回避できる。
よって、ATMやフレームリレー網の場合は、シェ-ピングとキューイングをやらないと、high priorityのトラフィックが破棄される可能性が高くなる。

1.2.5.VoIPとファクシミリ

IPネットワークでもファクシミリ通信は可能。 ただし、ファクシミリ通信の途中でエラーが発生すると、文字や画像が送信したものと違う形で相手に出力されてしまいます。防ぐために、高速で安定した通信回線を利用することや、ファクシミリをつなぐための機器に細かな設定を施すなど、配慮が必要。

■IP網でファクシミリを送る手順


(1)は、ゲートウエイがファクシミリ信号の文字や画像の情報を取り込んで画像データに変換。変換したデータを電子メールに添付して転送する方法です。音声と見なす方法より安定して運べ、パソコンでファクシミリを受信できる利点もあります。ただし、送信と受信の時間にズレが発生してしまいます。

 (2)は、ファクシミリ信号をIPネットワーク用に通すために取り決めた専用の通信手順を使います。音声と見なす方法と同じように送信側・受信側がほぼ同じタイミングで通信でき、かつ確実に通信できるようにと考え出されました。

■ファクシミリの種類等
1) ファクシミリの種類には、アナログ回線用のG3、スーパーG3方式, デジタル回線(INSなど)用のG4方式がある。
2) ファクシミリのメッセージはHDLCで伝送される。 
3) 伝送時間(A4版書類の1枚)

G3利用 SuperG3利用
前処理 約15秒 約8秒
伝送時間 約6秒 約3秒
後処理時間 約4秒 約1秒
計 約25秒 約12秒

■ファクシミリ信号透過機能

[信号入力]・・・[ファクシミリ信号かを判別]・・・[ファクシミリ信号ならばファックスコーディック実施]・・・[ファクシミリ信号としてIP網へ送出]

コーディックの種類として、リアルタイム性がある、T.38と蓄積交換型(ストアアンドフォワード型)というT.37がある。

■通信不良の原因
1) Facsimile over Packetのトラブルの原因の殆どは、通信開始時の呼設定とプリメッセージ手順(受信速度などを決める)の過程で生じる。
2) プロトコル、レベル、タイミングに起因
3) IP網の多段接続
4) 帯域不足

■ G3.Fax関連プロトコル
ITU-T勧告  V.27, V.29, V.33, V.17 モデム変調
T.0, T.1, T.3, T.4 データ速度の分類、走査線方向/密度、画素数、解像度、画像の符号化

■ T.38
G3 FAXのT.30信号(伝送制御手順)をIFP(Internet Facsimile Protocol)と呼ばれるプロトコルを使って、IPパケットに変換して、IP網でリアルタイムに中継する。TCP, UDP対応。

■ PAD調整
ファクシミリ通信のために、PBXに設定された送受信のPADレベルダイヤの調整が必要となることがある。

■ G3ファクシミリの通信基本シーケンス









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