Blue Flower

5. 社会と携帯電話
(1)災害とトラブル
1)通信の途絶
 帯電話は音声、データの通信が基地局の電波が届けば可能な小型軽量なすぐれものであることを述べてまいりました。
しかし、何時でも何時でも使えるか、というとこれは注意が必要です。
それは自然・人工災害による携帯電話システムを構成している機器や回線の破損による通信不能状態、または災害やイベントなどによる呼の集中による「輻輳」という状態。

 どのようなシステムでも同じですが、そのシステムを構成している機器やサービスが途絶えたらシステムとしては動かなくなってしまいます。
携帯電話では、通信機器、回線、電源、アプリケーションが主たる構成品ですが、どの機器も二重化してバックアップを取り、いざと言うときに備えていますので、その分安全性は向上しますが、絶対とは言えません。 
また現状への回復力も高いですが、どうしても空白時間が生まれるのはいたし方ありません。

2)輻輳という問題
 帯電話システムには、多くの利用者が日々利用していますが、何らかの理由で利用率が非常に高くなることがあります。
年末年始の挨拶の通話やメール、例えば花火イベントでの写真を撮って友人に送信するといったことが、地域限定的に起こることがあります。
この場合、通話ができなかったり、メールがエラーになるといった状況がうまれたりします。 また、例えば地震が発生し、安否や緊急通信をしたいために呼が集中することがあります。
 これが輻輳と呼ばれる現象で、通常時だと十分処理できる通話の数やデータ伝送の量が処理できないくらい大きくなった現象で、発信規制を電話会社が行いました。
 この規制は全体のシステムとして稼動不能になりえるために、ある一定の通信規制を電話会社が行ったためです。
また、では十分な通信回線、つまり利用者全員が一斉に使えるようなシステムにすればよいではないか、と考えたいですが、設備代が
膨大になり、利用料金が跳ね上がるでしょう。 また無線の場合、利用周波数から考えて不可能ではないかと思われます。
 この輻輳は、携帯電話間通話、携帯電話と一般電話(固定電話)、一般電話同士でも同じように起こります。

3)なぜ回線交換は対応できなかったのか
さらに詳しく見てみると、問題は特に回線交換方式電話に起こりました。 通常時には統計より加入者数に対して交換機の能力はどれだけあればよいか、つまり同時接続要求にどれだけ耐えられればよいかが問題となり、通常でも一説では加入者数の一部(3%)しか同時接続能力がないようです。 ただし、電話は100年以上の歴史がありますから、この歴史から導き出された数字と言う意味では説得力があります。 
実際ひとつの基地局には同時接続は限定的です。 ハンドオーバーを考えると更に少なくなります。 よって、人口密度の高い都会部では多くの基地局が必要になります。
つまり、そもそも大容量には対応しきれない基地局が損壊しているのに、子機(携帯電話、スマホ)からの接続要求は増える一方という状態だったわけで、残った基地局はまさしくパンクするので通信サービスができなくなり、サービス0よりは限定したサービス(発信制限)を選んだわけです。
以上より、つまり交換機システムがその最大対応能力を超えた事態が起こってしまったということです。
これに対して、パケット交換方式のデータ通信側は大震災では30%の利用制限があったもののメールの遅れはあったものの、そのほかのサービスは使えたという状況がありました。

 

(2)通信の回復とセキュリティ
1)通信の回復
災害で電話が使えなくなった場合、早急な回復が望まれます。 前の大震災の教訓から政府の指導もあり、各電話会社はその対応準備を進めています。 例として電話会社のドコモがこの事態に備えている対策は下記のようです。

A.システムとしての信頼性向上
①設備・回線のバックアップによる信頼性の向上
-中継伝送路(中距離伝送路)の多ルート化、2ルート化およびループ化
-通信設備の二重化、分散設置
②設備自体の強化、建物および鉄塔の耐震補強
-機器の耐震補強、固定
-地下トンネルへのケーブルの収容
-通信ケーブルの地中化

B.重要通信の確保
①防災機関等に対する災害時優先電話制度
②ネットワークの効率的なコントロール
③災害時における自治体等への貸出し等

C.通信サービスの早期復旧
①ハード面の対策
-可搬型基地局装置の配置
-移動電源車の配置
-復旧用資材の確保等
②ソフト面の対策
-被災時の措置マニュアルの策定
-災害対策本部等の組織化
-防災訓練の実施等

このような3大原則として経験を生かす対策を策定しております。
これにより、72時間以内の救助指針に沿った対応が可能になっているようで、その後起こった熊本地震でも、重点拠点間の通信は1.5日で回復し、大きな被害拡大を防いでいるという実績があります。

2)アプリケーション面からの防御
また、携帯電話のセキュリティにも今後注目が高まると考えられます。 
これだけ何時でも誰でも使えると、通話の盗聴、ハッキング・クラッキング、ウィルス侵入や遠隔操作などなど、特にIoTということでインターネットに接続できる機器が増えてくるとどうしても望ましくない活動をする人が増えてくるかもしれません。
特に、犯罪・テロの道具にされかねないので、本来ですと何重にも対策が必要ですが、その為に利用方法が複雑になりすぎるのもサービス低下ということになりますので両立する対策、使用方法が望まれると思われます。

以上

米田心文
飛翔テクノコム