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第1章 VoIP技術

1.4. H.323

1.4.1.H.323の歴史

第1版1996年11月
第2版1998年2月
第3版1999年
第4版 2000年

という開発の歴史がある。

Version 2
Fast Connect Procedurenの追加 
Q.931/H.225の呼制御シグナリングの際に、H.245のネゴシエーションを行う。 よって、H.245端末間制御シグナリング用のTCPコネクションは開設されない。

Version3
H.225(Q.931)呼制御シグナリングのTCPコネクションを利用して、H.245端末間制御シグナリングのメッセージをトンネリングする方法が可能。


1.4.2 H.323プロトコルツリー
H.323の構成は以下のようになっている。




* Q.931: 呼制御プロトコル 
TCP送信

* RAS: 網アクセス制御プロトコル 
端末とGKの制御
Registration, Administration, Status
丹南角登録、アドレス解決、発信申請・許可(帯域使用申請、許可)

* RTP/RTCP: メディアストリームプロトコル/ペイロードフォーマット

* H.245:端末間制御プロトコル
  音声・画像送受信の為のメディアストリーム用セッションを行うプロトコル


1.4.3.H.323概要

 H.323は、LAN上のマルチメディア通信の規格を定める国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)の保護勧告で、QoS(Quality of Service:ネットワークのサービス品質)は保証しない。これらのネットワークは、今日の企業のデスクトップで広く使われていて、イーサーネット上のパケット交換TCP/IPとIPX、Fast Ethernet、Token Ringなどのネットワーク技術を含む。従って、H.323規格はマルチメディア通信のための幅広い新しい一連の協同的なLANベースのアプリケーションにとって重要な構成要素である。

 H.323の仕様は、ITUのStudy Group 16によって、1996年に承認された。Version 2は1998年1月に承認された。規格は、カバーする範囲が広く、ポイント・ツー・ポイント及びマルチ・ポイント・コンファランス(会議形式の通信)ばかりでなく、スタンド・アロンのデバイスや埋め込み式のパソコン技術も含んでいる。H.323は、複数のLANやその他のネットワークの間のインターフェイスばかりでなく、呼制御、マルチメディア管理、バンド幅管理も規定している。

 H.323は、色々なネットワーク間の映像・会議を可能にするより規模の大きい一連の通信規格の一部である。それらはH.32Xとして知られていて、ISDNの規格であるH.320やPSTNの規格であるH.324なども含まれる

1.4.4 H.323の構成

以下の機器で構成される。
@ H.323端末・・・テレビ会議システム、IP電話(Voice Over IP)、パソコンのH.323アプリケーション(MicrosoftのNetMeetingなど)
A ゲートキーパー(H.323端末制御、管理)
B ゲートウェイ(H.323-H.320相互接続)
C MCU(多地点接続装置) ※MCUはH.323用とH.320用があります
D HUB,ルータ等のIPネットワークを構成する機器



1.4.5. H.323の特徴
@ コーデック規格
 H.323は、音声と映像のデータ・ストリームの圧縮及び伸長の規格を定め、様々な製造元の装置に対するある範囲での共通のサポートを保証している。

A 相互接続性
ユーザーは、受信点で互換性について心配しないで会議をしたい。H.323は、受信者が情報を伸長できることを保証しているばかりでなく、受信するクライアントが送信者と通信する方法も規定している。H.323規格は、共通の、呼設定と制御プロトコルを規定している。

B ネットワークから独立している
 H.323は、共通のネットワーク・アーキテクチャーの上位で動作するように設計されている。ネットワーク技術が進歩し、帯域幅管理の技術が改良されるとともに、H.323ベースのソルーションは、これらの強化された機能を利用できる。

C プラットフォームとアプリケーションから独立している
 H.323は、どんなハードウェアにもどんなオペレーティング・システム(OS)とも、結びついていない。H.323に適合したプラットフォームは、映像対応のパーソナル・コンピュータとか、専用のプラットフォームとか、IP対応の電話機とか、ケーブル・テレビのセット・トップ・ボックスとか、ターン・キー・ボックスなど、様々な規模や形で提供可能である。

D マルチポイントをサポートしている
 H.323は、特別なマルチポイント制御ユニットを用いないでも、3またはそれ以上のエンド・ポイント間での会議をサポートしているが、マルチポイント制御ユニット(MPC)を使用するとマルチポイント間の会議を提供するための、より強力で柔軟なアーキテクチャーが可能となる。マルチポイントの機能は、H.323システムの他の構成要素に含めることも出来る。

E 帯域幅の管理
 映像と音声のトラフィックは、広い帯域幅を必要とするので、企業のネットワークを妨害する可能性がある。H.323では、帯域幅マネージメントを導入してこの問題に対応している。ネットワーク・マネイジャーは、ネットワーク内の同時のH.323接続の数か、あるいは、H.323アプリケーションに提供されるバンド幅を制限できる。これらの制限によって、重要なトラフィックが中断されないように保証する。

F マルチキャストをサポートする

 H.323は、マルチポイント・会議において、マルチキャストの伝送をサポートする。マルチキャストでは、単一のパケットを、ネットワーク内の部分的な複数の宛先に送信するが、その際、複製は用いない。これに対し、ユニキャストでは複数のポイント間送信を行い、ブロードキャストでは全ての宛先に送信する。ユニキャストやブロードキャストでは、パケットがネットワーク全体で複製されるので、効率が悪い。マルチキャスト伝送では、マルチキャスト・グループの全てのステイションで単一のデータ・ストリームを読むので、バンド幅がより有効に利用される。

G 柔軟性
 H.323会議では、異なる機能を持った端末を含めることができる。例えば、音声機能だけを持った端末が、映像及びデータの機能を備えた端末の会議に参加できる。更に、H.323のマルチメディア端末は、複数のH.323端末間で音声と映像とデータを含む映像・会議を行いながら、他のT.120データだけの端末をデータ部分だけを使ってその会議に参加させられる。

H ネットワーク間の会議
 多くのユーザーは、LANから遠隔地にある場所との会議を望む。一例として、H.323は、LANベースのデスクトップ・システムをISDNベースのグループ・システムとリンクする方法を設定できる。H.323は、コード変換に伴う遅延を最少にし、最適の動作を提供するために、種種の映像・会議規格から抜粋した共通のコーデック技術を用いている。

I ISDNの呼制御プロトコルや、H.320/H.324(ISDN及びアナログ回線を利用したTV電話プロトコル)との相互互換性が高い。

K 複雑なプロトコル。 H.245完了までに、0.3〜0.5秒程度必要なときもある。

L 拡張された情報などは、ASN.1(Abstracted Syntax Notation One)の記述方式でかかれている。

M 実際の送信の際には、PER(Packet Encoding Rules)のバイナリ−エンコード方式を採用。

N 一般にH.323が"重い"といわれるのは、ほかのH32xシステムとの相互接続を保証しているため。


1.4.6 H.323シーケンス





(1) 登録

端末POWER ON → 自分のIPアドレスなどの情報をサーバーとなるゲートキーパーに登録  RAS(H.225)を使用。 Register, Admission, Status

@端末がGKのアドレスを知っている場合。
RRQ(Registration Request)を使って、自分のエイリアスアドレスとIPアドレスをGKに登録。

RCF(Registration confirm)でGKが端末にGKが設定したエイリアスアドレスを付加して、送られたエイリアスアドレスと付加した設定エイリアスアドレスを返送する。

※エイリアスアドレス: 端末を特定する識別子→・電話番号/・ホスト名/・メールアドレス

A端末がGKのアドレスを知らない場合
→GK発見手順
・GRQ(Gatekeeper Request)をマルチキャストアドレスに送信(端末)

・GCF(Gatekeeper Confirm9をGRQを受取ったGKが自分のアドレスを端末に伝える。

(2) 発信








(3) H.245トンネリング
H.245制御チャンネルを別個に作成せずに、H.225呼シグナリングチャンネル内にH.245メッセージをカプセル化またはトンネルすることが出来、呼セットアップ時間とリソース割り当てが向上する。

(4) ファストコネクトモード
H.323Version2に規格があるもので、Q.931からH.245と接続の手順を踏まないで、H.245で行う端末間の能力確認の手順に含めようとするもの。

Tx Rx
| |
|----→|
|←----|
|>>>>→|Setup
|←<<<<|Alerting
|←<<<<|Connect
|←<<<<|メディアストリーム

Q.931→H.245→メディアストリーム通常
Q.931→メディアストリーム‖ファストコネクト


(5) H.323端末のプロトコルスタック



RASメッセージ タイムアウト 最大再送回数
GRQ Gatekeeper 5 2
RRQ Registration 3 2
URQ Unregistration 3 1
ARQ Admission 5 2
BRQ Bandwidth 3 2
IRQ Information 3 1
IRR Information Request Response 5 2
DRQ Disengage 3 2
LRQ Location 5 3
RAI Resource Availability 3 2
SCI Service Control Indication 3 2


(6) Gatekeeperとして必要な機能

1.アドレス変換
2.承認管理
3.帯域管理
4.ゾーン管理
5.呼信号管理
6.呼呼び出し承認
7.呼び出し管理
<以上必須>
8.課金
9.呼び出し内容記録
10.自動復起
11.不可分散
12.ダイレクトコール/ルーティッドコール対応
13.H.245トンネリング
14.H.235対応
15.モニタリング対応およびSNMP通知

■ 擬人化した端末・・GK・・端末のやりとり

A端末(呼び出し)===GK===B端末(被呼出)

A→C 「Cさん、Aです。」
C→A 「Aさん何か用ですか? (MACアドレスとエイリアス番号から知った)
A→C 「Cさん、エイリアス番号(E.164、メールアドレス等)○○番のBさんと話しがしたいのです。 Cさん、Bさんのこと知っていますか? その為には○○帯域が必要です。」
C→A 「確認しました。 Bさんのこと知っています。 要求の帯域も利用可能です。 そしてBさんは話中ではありません。」
C→A 「ではAさん、Bさんと通話することを許可しますので、どうぞ通話開始手順に従って、通話して下さい。」
C→B 「さて、BにAからの呼び出し状況を知らせよう。 はい、これで通信経路設定完了」
B    「呼び出しベル鳴動要求があるな。 呼出ベルを鳴らそう。」


■ GK機能例
1)ダイレクトコールシグナリングとルーティッドコールシグナリング対応
2)H.245トンネリングに対応
3)H.245を経由したTDMFシグナリング
4)ルート設定、交換設定、ルートプライオリティ⇒インテリジェントスイッチ切り替えのため
5)より大きな規模のVoIP Telecomシステムをつくるために、外部GKとの連携
6)代替GK対応。 キャリアクラスの要求に応じる為。
7)H.235対応
8)最適ルーティングパス対応
9)DMZ対応
10)認証と課金用のRADIUSサーバー用RADIUSクライアントインターフェース供与
11)RASとQ.931のトレースモニター
12)時間単位での登録ゲートウェイのキープアライブ状況モニター
13)登録したゲートウェイ、IP電話、GKの問題に対するSNMP通知
14)単一ゾーンでの複数グループ対応






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